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日々の破片

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2007-08-06

_ LL魂(総括)

単純にショーとして見てておもしろいってのもあるわけだが(少なくてもおれはそうなんだけど)、本当の価値がどのへんにあるか、ちょっとだけ考えてみる。

すると、それは刺激ということにつきるんじゃないかと思う。

刺激というのは、たとえば、おれならこうするとか、そのてがあったか、とか、自分の発想を変えたり広げたりするための、イースト菌というかAオリゼーというかを植えつけられるというような感じのこと。

このあたりが実に微妙というかセンシティブなところなのだが、勉強カンファレンスと、刺激カンファンレンスの2分法が成り立つように思える。(というか、2分法でネタ出ししていくことで差異を強制的に作ることでそれぞれの意味を明確にするってことなのだが)

たとえば、会社に堂々と請求できるのは前者、自腹だなぁと考えるのが後者、TechEDは前者、RubyKaigiは後者、平日でもOKなのは前者、休日のほうが良いなぁなのが後者。

もっとも、その人の仕事領域が違ったりするわけで、たとえばおれにとってはYAPCは後者なんだが、明らかに前者の立場の人もいる。でも、JSもそうみたいだけど、このあたりのカンファレンスはそれ程、区別がはっきりしてるわけじゃないように感じる。

多分、区別がはっきりするとしたら、ビジネスで動く金の額によるんだろう(カンファレンスで動く金のことではなく、そのカンファレンスの題材によって動く金のこと)。それによって、会社に請求とか、会社が教育費用として出す金額、とカンファレンスの参加費とか平日、休日とかがリンクすることになるのだと思う。

つまり、RubyKaigiはまだまだ後者なんだが、それでもこないだの挙手の状況を見ると来年は前者になってしまうんだろうか? でも、それは成熟ということとは違うもので、異なる次元への移行なわけだが。で、おれにはそれはあまり楽しいことではなさそうだなということだ。

でもそれは逆も真なのだ。

Matzとko1ペアプレゼンなんて、明らかにLL魂が後者だから許されるのであって、前者のカンファレンスじゃ無理だろう。

で、そのあたりの微妙なところがVM魂のところにあったなぁ、と感じたわけだが。

_ レミーのおいしいレストラン

子供と見てきた。

恐るべき傑作。見たことがあるディズニー&ピクサー映画の中ではもちろん、ハリウッド文脈の映画としても圧倒的。

外に出て、屋根からあっちを見たら、そこにグストーのレストランの看板があるシーン。ここはすばらしく良いシーンだ。まさに映画そのもの。(看板のシーンとしては、市民ケーンの最初の看板が出てくるところに匹敵するかも)

まるでドラキュラか小林秀雄みたいな料理評論家のイーゴが悪役なのかと思うと、びっくりするほど偏見がない、真のプロフェッショナルな評論家なのだが(しかもどうも最後にはレストランのオーナーになるみたいだ)、彼が散々待たされたあげくに出された田舎料理(料亭に評論しにやってきたら、おでんが出されたようなもんだ)を鼻でせせら笑って、しかし口にしたとたんに、食べることの喜びを感じるシーンも悪くない。これも良いシーンだ。

その意味ではイーゴが主役で(わざわざ冒頭で紹介されるくらい重要な人物なわけだが、途中までまったく出てこない。そのため位置づけがシナリオ的には曖昧になっているのだが、でも物語としてはしょうがないだろうな)、彼がグストーについて抱いた誤解の解消の物語とも言える。誰もがシェフになれる、という言い回しにプロフェッショナルとして怒っていたわけだが、その意味が、シェフになるのに氏育ちは関係ない、ということだと理解するまでの物語だ。

それが明らかになるのは、一見主役に見える無能なリングイニ(ラングイニじゃないのかな?)が何もわかっていないということがわかる、レストランを相続した直後のインタビューの場面だろう。よりによって、血筋のことを言い出すわけなのだが。(にも関わらず、信頼を取り戻して、かつネズミ一族を味方につけることができるのは、その無能な素直さのためなわけだというところがシナリオとしてはうまいところなのかも)

それにつけてもレミーの持つ欠損は実に大きい。ところがその欠損を正しく表現すると物語が成立しなくなるので、そこのバランスを取る苦労も大きそうだった。不潔さを表現するために、下水や屋根裏や残飯などを出すわけだが、それを強調すると生理的な拒否反応を引き出しかねないわけだし。そこで常に2本足で歩かせて兄弟の4本足と対比させて前足は料理をするために清潔に保つんだとかしゃべらせてみたり、必ず手を洗うシーンを入れてみたりするわけだが。その一方で、アニメのネズミはミッキーのせいもあって元々そんなに不潔に見えるわけでもないので、この致命的な欠損に観客が気付かない可能性もあるので、そこを一族の集結シーンを入れて強調したり、いろいろ苦労の跡が見える。

それはそれとして作家達はマジンガーZのファンなのかなぁとか。どう見ても兜甲児。

マジンガーZ BOX1(初回生産限定) [DVD](石丸博也)

ちなみに、子供は単なるコメディ映画でこれっぽっちも感動しなかったとか小生意気なことを言っていたが、まあそうだろうな、という気はする。そのくらいうまくレミーがシェフになるということの問題点を隠蔽しているし、イーゴの気持ちの複雑さ(美食家ががりがりに痩せているという――ラングイニがわざわざセリフで指摘している――理由が読めていなかったし)も理解するのは難しそうだ。


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