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日々の破片

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著作一覧

2018-12-02

_ 進化的アーキテクチャ(続)

読んでいて気になった点については書いたので、本書について書く。

本書は書名の通り、進化的アーキテクチャについて書いたもので、アーキテクチャの対象はエンタープライズ(少なくとも複数のサービスから構成される規模)、書籍の分類としてはアーキテクチャパターン(だと思うが、本書ではアーキテクチャスタイルという表現をしていて、実のところこの2つの言葉の差異をおれは具体的にはわからない)についての本となる。アーキテクチャそのものを構成するデザインパターンについての本ではない(それはすでにエンタープライズアーキテクチャーがあり、まだ現役だ)。

したがって、最上位のソフトウェア設計のネタ本である。

問題意識は、今やエンタープライズレベルのソフトウェアはとんでもなく複雑化していて数10年前からのレガシーなものから最近の流行のものまでが混在していて、オンプレミスとクラウドが平然とシステムに混在していて、各種言語で書きまくられていて、当然運用も複雑、でも企業にとってソフトウェアの重要性は高まるばかりだから、これらをどうにかうまく結合して運用してビジネスに合わせて変化させ続けなければならない。どうやって? ――だ。

そこで筆者たちは「進化的アーキテクチャ」を提案(おそらく机上の空論だけではなく、実際に多少は実装もしたうえで)する。

1章「ソフトウェアアーキテクチャ」ではコンウェイの法則(組織が設計を生み出す)に対して逆コンウェイの法則(設計が組織を変える)を置くことで、ビジネスの変化は組織も変えるので、それをしっかり支える設計が必要であり、つまりは進化的でなければならないということを説明する。

2章「適応度関数」(1章と全然粒度が異なることに注目。これは本書を読みにくくさせている1つの原因だ)で、進化的とか言い出すと恣意的で野放図な設計になりかねないから、常にどうあるべきかを計測可能なように設計して検証しながら進めなければならないと釘を差す。

3章「漸進的な変更を支える技術」。最初の山場。「進化」とは何かをある程度具体性を持ったマイグレーションとして示す。ここは最初の山場。

4章「アーキテクチャ上の結合」。現在主流のアーキテクチャスタイルを示し、それらはどのように進化すべきかを説明する。おもしろい。

5章「進化的データ」。勉強になりまくる。

ソフトウェアだけ考えるのは宇宙飛行士に任せて、データのことをちゃんと考えなければだめだと、データベース設計を使って(それ以外にもデータは当然あるから)示す。ここは本当に重要。

6章「進化可能なアーキテクチャの構成」。なんと、3~5章は、進化的アーキテクチャの構成要素に過ぎないということを宣言してから、それらを結合させて全体像を示す。わかりにくいぞ。だが、本章自体はパターンランゲージで記述しているように読める。内容は明白で、これも参考になりまくる。なお6.4はぐさぐさする棘の塊のようでちょっと読むのが辛かった。

7章「進化的アーキテクチャの落とし穴とアンチパターン」。まず、落とし穴とアンチパターンは異なるという説明がある。これはおもしろい。落とし穴は歩いて通れるように見えるので進むと落ちる罠だ。常に避けなければならない。対するアンチパターンは「この場合には良いパターン。でも、これについては不適合」なので、適用対象の見極めであり選択の技量に属する。この章は本当におもしろい。

7.1.4は、クリーンアーキテクチャに続いて、むやみなDRYの否定となっている。すごく同意する。

8章「進化的アーキテクチャの実践」という勇ましい題。だが、実践という言葉から普通に想像される具体性を持つ内容ではなく、まず経営者視点に立って(つまりはエンタープライズ全体を俯瞰して)設計するために知るべき組織の諸要素と利用可能なリソースについて説明したものと、パターンランゲージによる組織を動かしつつアーキテクチャを進化させる方法を解説したものから構成される。ただ、この章もこれまた参考になる。

以上で、本体は終わり、参考文献がくる。本書がどういう領域で何に着目しているかが明らかとなり、選択それ自体がおもしろいことと、自分のためにも参考文献をアマゾンで示す(アフィ乞食なのでここから買ってくれるとすごく嬉しいが、そっちは主眼ではない)。

The DevOps ハンドブック 理論・原則・実践のすべて(ジーン・キム/ジェズ・ハンブル/パトリック・ボア/ジョン・ウィリス/榊原 彰/長尾 高弘)

世界はシステムで動く ―― いま起きていることの本質をつかむ考え方(ドネラ・H・メドウズ/Donella H. Meadows/小田理一郎/枝廣淳子)

ソフトウェアシステムアーキテクチャ構築の原理 第2版(ニック・ロザンスキ/オウェン・ウッズ/牧野 祐子/榊原 彰)

リーンエンタープライズ ―イノベーションを実現する創発的な組織づくり (THE LEAN SERIES)(ジェズ・ハンブル/ジョアンヌ・モレスキー/バリー・オライリー/角 征典/エリック・リース/笹井 崇司)

エリック・エヴァンスのドメイン駆動設計 (IT Architects’Archive ソフトウェア開発の実践)(エリック・エヴァンス/今関 剛/和智 右桂/牧野 祐子)

マイクロサービスアーキテクチャ(Sam Newman/佐藤 直生/木下 哲也)

Release It! 本番用ソフトウェア製品の設計とデプロイのために(Michael T. Nygard/でびあんぐる)

データベース・リファクタリング(スコット W アンブラー/ピラモド・サダラージ/梅澤 真史/越智 典子/小黒 直樹)

人月の神話【新装版】(Jr FrederickP.Brooks/滝沢 徹/牧野 祐子/富澤 昇)

ゴールドラット博士のコストに縛られるな! 利益を最大化するTOC意思決定プロセス(エリヤフ・ゴールドラット/村上 悟/三本木 亮)

新装版 リファクタリング―既存のコードを安全に改善する― (OBJECT TECHNOLOGY SERIES)(Martin Fowler/児玉 公信/友野 晶夫/平澤 章/梅澤 真史)

ドメイン特化言語 パターンで学ぶDSLのベストプラクティス46項目(マーチン ファウラー/Martin Fowler/角 征典/ウルシステムズ株式会社/レベッカ パーソンズ/Rebecca Parsons/平澤 章/大塚 庸史/坂本 直紀)

ThoughtWorksアンソロジー ―アジャイルとオブジェクト指向によるソフトウェアイノベーション(ThoughtWorks Inc./株式会社オージス総研 オブジェクトの広場編集部)

なんということでしょう。

すべて日本語に翻訳されているではないか。1億人という市場人口のなせる技だ。

本書は読みにくいし、問題点もある。間違った読者が買えばアマゾンに星1レビューが乗りまくるタイプの本だ。

にもかかわらず、本書は重要であり、読む価値は極めて高い。手放しではお勧めしないが、上に並べた参考文献のいずれかを読んだことがあれば、それが現在のソフトウェア開発の知見において、どのように組み込まれているのかを確認するためだけでも読む価値がある。

進化的アーキテクチャ ―絶え間ない変化を支える(Neal Ford/Rebecca Parsons/Patrick Kua/島田 浩二)


2018-12-08

_ BICまつりでM5 Lite

そろそろ車を買い替えるわけだが、カーナビが問題だ。

一番良いのは多少高くても時間も見てくれも一番効率が良い、納入時にメーカーオプションなりディーラーオプションなりでインテグレートしてあることだ。

が、ディーラーの営業の人に聞いてみたら、やはりハンドブレーキを入れていないと動かないというごみくずな上にいろいろ進化しているために、以前のように1本線を切ってアースすれば済むというレベルでもないようだ。

誰がそんな役立たずを買うか。

というわけで、いろいろ調べるとiPhoneとモニター付きオーディオシステム(カーナビではないので呼称も変わるが、リアカメラ画像を見たりするのでいずれにしてもインテグレートされたモニターは必須なので買うことになる)をつないでアプリでiPhone用のカーナビを使えるというカタログに書いてあるのを見つける。iPhoneが10万円で、モニター付きオーディオシステムが6万くらい、足せば16万円で、一方カーナビが(最初から付けるのであれば)安くても16万くらいなので、そもそもどこのどいつがこんな無意味なカーナビ(なるほど、確かにカーアクセサリーだな装飾にしかならない)を買うのか? と驚く。そりゃパイオニアも死ぬだろう。

問題はSIMフリーのiPhoneとか買う気にはなれない(おれはアンドロイド一択だからメインがiPhoneになることは無い)ことで、どちらにしても助手席の妻か子供が操作することになるのだから、SIMフリーなタブレットのほうがいいじゃんと考え付いた。

なんといっても今、Kindleマンガ用のNexus9がとんでもなく遅くなっているから(というか、使っているうちにどんどん遅くなるって、Nexus7もそうだったが、AndroidってWindowsよりも輪をかけてゴミなOSだよなぁ。Windows 98とかWindows NT4みたいだ。いったいいつの時代のOSなんだ?)、そろそろタブレットの新しいのも欲しいところだ。

ついでにPayPay祭りもやっているわけだし。1/40で全額ポイントバックもありえるし、外れても20%ポイントバックでOKだ。

というわけで、ビックカメラに行って、話題沸騰のファーウェイじゃなくてホァーウェイのSIMフリーなやつを購入。

Huawei 10.1インチ MediaPad M5 lite 10 SIMフリータブレット ※LTEモデル RAM3GB/ROM32GB 7500mAh【日本正規代理店品】M5LITE10/LTE/A

_ ハックス!

M5 LiteにKindleをインストールして何をロードするかライブラリを眺めていたら、買ったまま完全塩漬けになっていたハックス!を発見。

そういえば(どえらくおもしろい映像研に手を出すな!と同じく)女子高生のアニメ研ものだったな、と読んで見ることにした。

絵柄は良いし、話のテンポも展開もうまいのだが、なんか気持ち悪い感じもする。どうもこの作者は、アリスと蔵六もそうだが、言語表現がうまくできないことによるコミュニケーション不全に強いこだわりがあるみたいだ。

そういえば、ぼくらのよあけ(これは文句ない傑作)もコミュニケーション不全もテーマになっていたが、それ以上の子供の団地をめぐる冒険という側面が強いからあまり気にならなかった。

ところがハックス!は、アニメ研の部長、部外者の先輩、同じく新人の小僧君(副主人公なので何考えているかは明確に表現する)、映画研の気持ち悪い人、中学から一緒に来ている読書人(副主人公なので何考えているかは徹底的に書き込まれている)と、コミュニケーション不全なステロタイプがわらわら出て来るので、話は楽しく愉快なアニメ制作マンガなのに、グロテスクな陰気さがある。

が、おもしろいはこれまた抜群におもしろいんだなぁ。というわけであっというまに読了。妙な作家だ。

さすがに新しいマシンだけあって、ページめくりだろうがなんだろうが一切の遅延なく読み返しも楽勝、良いものを買った。

ハックス!(今井哲也)


2018-12-09

_ ピアソラ 永遠のリベルタンゴ

野口さんがお勧めしていたので観に行った。

少なくともヨーヨーマのCD買って持っているくらいにはピアソラは好きな作曲家だ。

ヨーヨー・マ プレイズ・ピアソラ(ヨーヨー・マ)

でも、1曲目がタイトルにもなっているリベルタンゴだとは知らなかった(ていうか全部同じ曲に聞こえていた。映画観てどこで区別するかわかった気はするが)。

映画は、息子の思い出話と娘によるインタビューテープ(伝記執筆のために録ったもの)、放送テープ(だと思う)、家族8mmのモンタージュで、おそらく作家のダニエル・ローゼンフェルドは、ヴィムヴェンダースに影響を受けていなければ嘘だ。悪くない。

最初に息子が語る。父親が心臓病で危うくなったときに、作曲に専念したらどうか? と聞いた。すると父はこういった。おれは演奏が好きだ。やめてたまるか。趣味の釣りはどうだ? どちらも同じだ。釣りもバンドネオンも背筋と腕の力だ。バンドネオンは10Kgある。だからどちらもやるんだ。

鮫を釣ることから、原題は、the year of the sharkで、もしかすると作家はthe year of the horseのことも少しは考えたのかも知れない。

父は右脚が細く左脚が太く、それを指摘するとパンチの嵐が待っていた。

そんな子供を持つと親は大変だ。2人目をあきらめた。1歳になると7回手術をし、6歳のときにニューヨークへ移住した。

その間にモンタージュが入る。1960年代初頭に、タンゴの破壊者と呼ばれたことについてのインタビュー。

ニューヨークへの移住は1920年代だろう。

父親(ここでの目線はアストルピアソルになるので最初に出てきた男にとっては祖父となる)はマフィアに頼んで床屋をやる。店の裏には賭場がある。母親は風呂で密造酒を作り、荷台に乗せてカバーをかけてその上におれが腰かける。楽しそうな家族の遠出に見せかけて警察をやり過ごす。

そうやって稼いだ金で父親がユダヤ街で買ったバンドネオンを渡す。毎晩演奏させる、週に2回先生のところに行く。他にボクシングのジムにも通う。殴られる前に殴れ、と教わり、それを人生訓とする。後のほうでは隣の家のピアニストにピアノを習い、それが後後まで影響となる。

太平洋戦争か欧州戦争かの前くらいにアルゼンチンへ戻る。

なんか、20世紀の歴史そのものだ。

朝から晩までバンドネオンの練習をする。

タンゴバンドの演奏会を毎週欠かさず観に行く。ある日、演奏が終わると自分を売り込みに行き13人目のメンバーとなり、さらによりメジャーバンドに移りブエノスアイレスに出る。父親は喜び、母親は泣く。

新しい音を求める。ダンスのためのタンゴに興味が失っていく。

五重奏団を結成し、弦に不協和音を求める。ヒッチコックの鳥みたいだ。が、この音楽は好きだ。

1950年代になるとロックアンドロールとロッカビリーが出てきてタンゴにとって代わられる。

ピアソル家はそういうものだが、ニューヨークへ移住する。息子をジュリアード音楽院に入れようとするが金がない。プエルトリコへツアーへ行っているときに父親が死ぬ(だったかな?)。

そこで傑作をものする。借金してアルゼンチンへ戻る。

作曲コンクールで上位に入り、フランスへの(おそらく給付金ありの)音楽留学生となり、そこで作曲を学ぶ。先生にピアソルとはなんだ? と聞かれバンドネオンに戻る。

アルゼンチンに戻りタンゴの破壊者として君臨するが、守旧派に拒まれてしまう。ヨーロッパへ渡りイタリアを根拠地とするのが1970年代。息子も呼び寄せて電子楽器8重奏楽団を結成する。

1970年代後半に潮目が変わってアルゼンチンへ戻り五重奏団になる。息子と音楽性の違いで決裂する。

アルゼンチンは軍政が布かれ、娘は自由の闘士となりメキシコへ亡命する。

1980年代は和解の時代だ。以前拒んだ娘の伝記執筆への協力に応えてテープを残す。息子とも和解する。でも鮫釣りには1960年代初頭に1度行ったきりだ。

バンドネオンという楽器は不思議だ。律が決まっているのか(鍵盤楽器である以上律を外すのは不可能なのだろう)どうあってもおれにはタンゴに聞こえる。本人はリズムだけはタンゴだが他は違うと語っているのだが。

真剣に音楽のことばかりやっている人間固有の美しいドラマがある。

映画としても良いものだった。

映画の後にジュンク堂へ行き、バラード短編集の3巻と折りたため北京を購入。

折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 5036)(郝 景芳/ケン リュウ/牧野 千穂/中原 尚哉/大谷 真弓/鳴庭 真人/古沢 嘉通)

表紙の色をわざわざ黒に染めているので岩波新書のアナキズムを買おうかと思ったが、ぱらぱら眺め、おれの知識に特に付け加えるものもなさそうなうえに、文体がアナキストならではのべらんめえで(どうして、この主義の連中はこうなんだろう? 伝統なんだが、石川三四郎みたいな書き方だってあるんだからもっと落ち着いた文体のほうが良いと思うんだがなぁ。まして竹中-平岡の時代じゃないんだから)うんざりしてやめる。昭和中期まではアナキスムの対象は正統左翼からはルンプロとして捨てられている連中だから親しみやすい文体としてありだとは思うが、21世紀になってこれはあり得ないだろう(まるで伊藤野枝のやつみたいだと思ったら同じ著者だった。もうこの方法論で進むつもりなんだろうが、作り過ぎていてどうも違うんだよなぁ。これがブレディみかこだともう少し普通なんだが)。

アナキズム――一丸となってバラバラに生きろ (岩波新書)(栗原 康)

さらに松濤美術館へ行って廃墟展を見る。

あ、これ知っていると思ったらユベールロベールで、そもそもおれは廃墟美術が好きなのだ。

ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージがまとまってあって実に楽しいのだが、それよりも3点驚異があった。

・明治初年: それまでまったく廃墟芸術というものに感心を持つことが無かった日本人(と書いた瞬間に、まて餓鬼草子や餓鬼草子の荒廃した都や羅生門(芥川の元ネタ)は廃墟芸術ではないか?)に、廃墟のデッサンの模写を教えたお雇いイタリア美術教師のおそらく影響でイタリアへ留学して廃墟を書いた画家たち

・1930年代を中心とした廃墟画: 暖色系で描かれた抽象的な廃墟

・21世紀の画家: 松濤美術館だからだろうが、元田久治、野又穣の渋谷の未来画群、大岩オスカールという作家の動物園(切り取られたトンネルの向こうの光も好きだが、動物園が特に良い。それにしても自分の記憶の信濃町高架下の風景に重なるせいで(本当は北千住らしいが、画は観たものの風景でもあるのだからおれにとっては信濃町だ)衝撃度が高い)。

行って良かった。


2018-12-15

_ 日銀日記読了

通勤中にぽつぽつ読んでいた岩田規久男の日銀日記を読了。

ここ数年のお金の動きが手に取るようにわかるという点でおもしろかったし、困難に知力で立ち向かう点が感動的で大いに力づけられる。

今の日本の政治と経済、これらが世界や世代や(ある意味)文化とどうかかわるかといった多角的な意味からもすさまじくおもしろい。

最初はとにかく日銀が2%にコミットするという点に集中される。就任前から安倍がデフレ対策をすると明言したことが好感されて円安株高へ向かいつつあるためにシナリオ通りの動きに見える。

ここで、内閣(安倍自民党)-官僚(財務省)-日銀が基本的には節度を守ってお互いの領分でそれぞれの政治を行うということが明示される。相当驚いた。内閣と官僚は不可分かと思っていたし(が、考えてみたら民主党政権時にむしろ平然と敵対することがあるということもわかっていたな)、日銀-金融庁-財務省というのはなんとなくだが関連していて同調するものだと思っていた。

うまくいってはいたが、黒田が消費税増税を容認どころか増税しなければどえらいことになる(=岩田から見ると理論的に正当な根拠がないので「どえらいことになる」という雰囲気語が多用される)発言のせいで、増税を不安視していた内閣も増税に傾き(ここは驚いた。そうだったのか)、実施(このあたりで財務省に対する怒りがいろいろ出てくる。黒田さんも財務省出身だけに、とかぽつって出て来たり)。

いっきに経済が奈落へ落ちる(おまけに原油安が落ちたうえから土をかける)。

あとはどこまで掬い上げることができるかが焦点となる。

・自民党の悪口は基本的に書かずに、邪魔をする政治家の例はすべて民主党にするところが意図的でおもしろい。

・財務省の宣伝に日銀が負けているのがなぁみたいな愚痴がときどき出てきてなかなか興味深い

・というか、インフレになれば、大打撃を受けるのは年金生活をしている人や生活保護を受けているような人、つまり収入のベアは期待できず、雇用が改善しても年齢的に就業が社会的にできない人たちで(ここまではわかっていたようだが)、この層が1/3を占める(ここは消費税の影響があまりに大きく長引くので各種報告を読んではじめて知ったような印象を受ける。というか本人が70歳を越えて仕事をしているのだからある意味無理ないのかも。にしても、この年齢でこの知力という点にも大いに力づけられる)

・だから所得再分配策を適切に政治が打たなければならないのに何やってんだ? という歯がゆさ(このあたりではむしろ減らし続けている自民党の悪口をいくらでも書けそうなのだが、民主党がこういう所得再分配に関する提言も提案もせずに財務省とその愉快なエコノミストや御用学者(本人も国に雇われているのだから御用学者なところがおもしろいから、そういう書き方は本文ではしていない)の代弁しかしないところを糾弾する)

・それにしても雇用環境が大幅に改善しているのに、所得が伸びないのはなぜか? を、非正規雇用の伸びが著しいことで解説していくところはおもしろい。

・中小企業の代表者との懇親会でだんだん腹を立ててくるくだりはおもしろい(あまりにこちらの持っているイメージ通りなので。というか1970年代から変わってないみたいだ)

・政治と金融政策が正しく噛み合えば、インフレへ向かう。したがって企業は生産性を高めるための施策に投資する。人材の流動性が高まる。流動性が高まるということは、レイオフと再就職が平常化する。レイオフ前提となるのだから、失業給付はもちろん、そもそもインフレを前提とするのだから年金や生活保護、子育て支援、といった所得再分配政策は大前提。

ところが、そういった大前提となる政策をほとんどせずに(それでも定年延長策などはやっているわけだが、年金の受給年齢の引き上げという側面だけに財務省が注力するので全然マインドに対して効果がない)、やれ出口戦略(そもそも全然デフレマインドからの脱却もできていない現状で何が出口だという怒りとか)、やれハイパーインフレ(世界的な不安が増大すると世界中が円を買って円高になるは、デフレでものがだぶついているはのこの状況で何がハイパーインフレだ)と、無駄な論議に時間を使ってデフレマインドを長引かせているのは一体なんなのだという怒りとか。そりゃまともな政策が無ければ、企業は将来を不安視して内部留保を投資ではなく貯蓄に振り向けるし、国民は消費ではなく貯蓄に振り向ける。政治は何をやっているんだ! (というわけで、やっと日銀を離れて政治についてもフリーハンドで語れるようになったので語ったり=10%をやるとしたら、すべて子育て、教育、そういったことに振り向けるべきとか)

・安倍は存外まともな政治をしているのだなと思った(良いも悪いもひっくるめて一番の代表者に原因を求めるのが愚かだということは北朝鮮や昭和の日本を見ていても思うわけだが、まあ、そう見てしまうものだ)。

・理屈として読んでいて違和感を覚えるところはなかった。

日銀日記 ──五年間のデフレとの闘い(岩田規久男)

アベノミクスの第3の矢の成長戦略というのは、本書を読んで、本来であれば所得再分配政策(と雇用環境改善による労働力の増加戦略としての、女性就業(子育て支援が含まれる)と老人就業)の意味だったと知った。なんか成長させる方法なんてわからないから企業にお任せみたいな言っているだけの矢なのかと思っていた。


2018-12-18

_ 新国立劇場のファルスタッフ

2015年の12月から3年ぶりなのだが前回の記憶がほとんどなくて、舞台の回りっぷりにえらく興がそそられる。

最初支配人(かどうかは知らない)が出てきて、クイックリー夫人(だと思うんだけど)が風邪をひいたが、本人は大丈夫といっているから歌いますという何かあっても勘弁というエクスキューズみたいなのを話す。

ファルスタッフは、オテロでほとんど序曲らしきものを排した続きで、幕があくといきなり歌い出すわけだが(序曲を前奏曲に変更したヴァグナーに対抗して、なくしてしまうという選択はおもしろいと思う)逆に印象が薄い原因なのかなとか考える。

しかしそれはそれとして、ロベルトデカンディアのファルスタッフの偉丈夫っぷりにえらく感心する。

アリーチェのエヴァ・メイは実に良いし、ナンネッタの幸田浩子も実に良い。歌手はとても良いのだ。

が、1~2幕連続の約90分はいささか長いと思う。

3幕は抜群なのだが、冒頭のファルスタッフの述懐がいまひとつ、以前観たときの印象と違い過ぎる。もっとかっこ良い曲だったような気がするのだが、ほとんどシュピレッヒシュティンメみたいに聴こえる(多分、1幕終わりあたりの曲とごっちゃにしているのかも知れない)。とは言え、良い曲ではある。

なぜか理由は良くわからないのだが、登場人物の中で一番好感が持てるのがファルスタッフなので、全員がある意味敵にまわっていじめる物語の構造が、いまひとつ楽しめない理由かも知れない。とはいえ、最後はファルスタッフ自身が笑って終わらせるわけで、そう嫌いなわけでもない。妙な印象な曲だな。

突然、薔薇の騎士は、単にフィガロの結婚というだけではなく、オックスの奇抜さ、愚連隊を率いる太り気味のおっさんであり、誇り高き騎士(貴族)であり、しかし現実には金が欲しい詐欺師的な位置にあり、周囲から魂胆を見抜かれていて結婚詐欺まがいのことをされて、お化けの集団に脅かされる、しかし騙されたとわかると気分よくあきらめるというプロットから、ファルスタッフでもあるのだな、と思った。


2018-12-19

_ ENBアクラム・カーン版のジゼル

東劇でジゼル。ジゼルはタマラロホ。

ENBって何かと思ったら英国立バレエなので、ロイヤルも国立のはずだが? と不思議に思ったら、子供がロイヤルは王立だから両立するんじゃないかと言う。おもしろい。日本でいうと(確かそんなものはないと思ったが)国立雅楽団とは別に宮内庁雅楽部(これはある)が両立するようなものかな。それとも王立系は、国とは別の収入があって別会計なのだろうか。だとしたら、日本も天皇家が独立することもできそうな気がする(各地の陵を開放して入場料をとったり、御苑とか離宮とかを戻して入場料を得たりとか)。そういうある種の国と異なる収入で自立すると、当然、各神社からみかじめ料を徴収することになるわけで、金を払うとなると文句も言いたい放題で、靖国が反乱を起こして別天皇を立てて都内で南北朝時代に突入とか実に楽しそうだ。

いきなり地響きのような超低音でリズムが刻まれ、弦の不協和音で始まる。アクラムカーン版というのはこういうことですかと、完全なモダンバレエなジゼルとは考えていなかったので度肝を抜かれる。裸足のジゼルか。

ヒラリオンと王子の対立、村人の群舞で逢瀬を引き裂かれるジゼルと王子、後ろの手形がたくさんある壁が、村の世界と王様の世界を分断する象徴となっていて、王子だけがそれを開けられる。肉体の動きと音のすさまじい迫力で目を離すこともできない。

王様の世界でのヒラリオンが被る帽子は何の象徴なのだろう?

婚約者の傲慢っぷり(ジゼルにバンドのようなものを与えずに落とすとか)。花占いは無いと思うのだが、後半バラの赤のようなものが見えたような気もするが気のせいかも。

2幕ではトウシューズを履いて出てくる。さすがにヴィリは空気よりも軽いのだからトウで立たなければならないのだな。ヴィリの女王とジゼルは槍(ではないと思うが、何か生命の交換に利用するらしき棒)で戦う。今度は壁は夜の世界と昼の世界を分断するものとして最後王子は解放される。

ヒラリオンは逃げて溺死ではなく、ヴィリに嬲り殺しになり、目には見えない水辺だとしたら、まるでバッコスの信女に八つ裂きにされるオルフェウスのようだ。

とにかくとんでもなく素晴らしい舞台(映画だけど)だった。

文句なく大傑作。

クレジットにはアダンのオリジナルを元にしているようなことが書いてあるように見えたが(元の曲が聴いたはしから忘れるような普通のバレエ音楽だけに)どこがどう切り出されて変形されたのかはわからなかったが、言われればそうなようにも思う。不思議な感覚だ。


2018-12-22

_ サカナとヤクザ読了

サカナとヤクザ読了。おもしろかった。

ところどころあえて主語や時制をぼかした書き方をしていると思われる箇所があって、読書体験が闇落ちするところがあるが、まあ内容が内容だけにしょうがないだろう。

もちろん、天保水滸伝は大好きなので、銚子の高寅のパート(ここは主として昭和20年代のことなので危険はないだろうが、なぜか30年代や10年代と天衣無縫に行き来してしまうところがあって、そこは落ち着かなかったが)がとりわけおもしろいのだが(藁一本の本場のほうだけにまあそうなんだろうなぁとか)、内容のビビッドさではウナギ(実は調査そのものが調査といえるような数値を出せていないので、実態としては増えているのか減っているのかわからんという石油状態だとは知らんかった)、話の生々しさではナマコ、なんとなく知っているだけに興味津々なのがロシア水域で、つまるところどのパートをとってもおもしろい。

サカナとヤクザ ~暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う~(鈴木智彦)

_ 千年狐を買った読んだ

ツィッターであまりにRTされているうえに、原作が干宝の搜神記とあれば読まないわけにはいかんだろうと、最初ただ読みコーナーで読んでいたが(全部は出ていないので)、結局Kindle版を買って読んだ。

人の親であり、かつ特別な理由もあって鳥の親分のパートでは思わず涙さしぐみ帰りきぬ。

千年狐 一 ~干宝「捜神記」より~ (MFコミックス フラッパーシリーズ)(張 六郎)

_ プラネット・ウィズ1、2

買っておいたプラネット・ウィズの1と2を読了。というか、完結してから読めば良かった。

水上悟志にかぎらずヤングキングのマンガは敵も味方もそれぞれの立場を鮮明にして戦うので、読んでいて実に気持ちが良い。これも、イプシロン人とキグルミの犬と猫と地球人の四つ巴というかなんというか面倒な設定で敵側と味方側は明白なのに、それぞれがそれぞれの思惑で好き勝手なことを言いながらバトルしたり仲良くしたりしているので、おもしろいことこの上ない。

アニメが最初で結末も同じ(1クールアニメでもう終了しているらしい)と作者あとがきに出ているのだが、何しろ本としては途中なので、どうかたをつけるのか楽しみだ。

プラネット・ウィズ(1) (ヤングキングコミックス)(水上悟志)


2018-12-26

_ カサヴェテスのビッグトラブル

妻が図書館で、観たことないカサヴェテスがあったとDVDを借りてきたので一緒に観る。

なんだこりゃ?

ピーターフォークこそ出てはいるが、いつもの人たちではないし、なんかちょっと違う。もともとわざと演技させることがある作家だが、そういうのとは違って、本気のコメディの演技だ。

3つ子が飯を食いながらアイネクライネナハトムジークを口で演奏している。主婦が追い立てる。夫が渋い顔をしている。一晩寝ないで計画を練ったがどうあってもエールに進学させるのは無理だ。

すると妻はマシンガントークで、カリフォルニア大学では音楽家は飯が食えないが、エールならばお金持ちの同級生とかなんかでコネができるから音楽家として飯が食える。事実、音楽で飯を食っているのはエール出身者じゃないか。しかも家の子はちゃんと試験を受けてエールに合格した本物なんだからますますエールに行くべく運命づけられているわけじゃない。

でも3人だと年間何十万ドル(数値は忘れた)で4年だと何百万ドルで無理だ。

そこをどうにかするのが一家の長でしょ。この後も、この奥さんはこういう発想の人として不快な笑いを取りまくる。(むちゃくちゃいうわりには夫の浮気を疑うシーンとかの演技は抜群だったり)

で、夫は仕事に行く。むちゃくちゃだ。

損害保険会社らしい。黒人の男が係員に大破したのだから保険を下ろせと訴えるのだが、それはお前が泥棒だからだとか無茶苦茶言われて追い出されるのを後目に上司に呼ばれる。エールに子供は入れられるのか? 無理。では社長に言え。あいつはエールだ。エール出身者はクソ野郎だから無理だと思う。でも一応は言え、と自信満々。この上司が、実は最大のキーパーソンにして、物語世界で唯一のまともな人間(ただし被保険者には鬼)ということはこの時点でわかるわけがない。

しょうがないので社長室へ行くと、老人3人で猥談しているが、優秀なセールスマンの直訴とあって、社長は秘密の作戦会議室へ招く(ここが伏線とは思わなかった)。

という調子で、火災保険のセールのために、訪れると、そこはピーターフォークが住むとんでもない陰謀に満ちた家だった、となる。

なんといっても、死体に扮装したピーターフォーク(他にも変装しまくる)の演技が最高にばかげていて笑ってしまったが、無茶苦茶な作品だった。最後は無事にハッピーエンド。

なんだこりゃ? と思ったら、妻があとから、ピーターフォークとアランアーキン(セールスマン)の二人で企画したコメディだけど、監督が手配できずに、カサヴェテスに泣きついて作った作品だから、カサヴェテスは生前自分のフィルモグラフィーに載せるにすさまじく抵抗したし、当時はピーターフォークのほうが圧倒的に人気があったから作家としてのカサヴェテスというクレジットは無視されていたらしいが、今となってはカサヴェテスという名前で発売されているという曰くものらしいとか調べて教えてくれた。

久々に、アメリカンも良いところの最低のコメディ(比較的誉めている)を観たが、笑わせてはもらえたから、観て良かった。実際、テンポといいコメディの文脈に沿った演技や絵を考えると、超一流は何を作ってもおもしろいという見本のような作品でもあった。(正直なところ、ラブストリームスや壊れ行く女よりも、こっちのほうが好きだ)

ジョン・カサベテスのビッグ・トラブル [DVD]


2018-12-27

_ Rubyで例外クラスを定義する

次のスクリプトは不思議な動作をする。
class TestError < RuntimeError
  def to_str
    "foobar" 
  end
end
 
begin
  raise TestError.new('hello')
rescue TestError => e
  puts 'OK'
rescue => e
  puts e.class    #=> RuntimeError
  puts e.message  #=> foobar
end

なぜかRuntimeErrorに変わってしまう。もちろんクラス指定でrescueはできない。

これは仕様なのかバグなのかよくわからないが、理由は、raiseの第1引数がStringだと判断されてしまうからだ。というのは、TestErrorクラスにto_strが実装されているからだ。

これが仕様(raiseに第1引数はto_str実装クラスを含むStringの一種ならばそれをmessageに持つRuntimeErrorをスローする)なのか、バグあるいは親切にしすぎ(間違えてHashやArrayを渡された場合にto_strすることで救済する)なのかはどちらでも良い気がするが、つまるところ、例外クラスを独自に作成する場合は、to_strメソッドを実装してはだめということだ。定義した瞬間にそのクラスは意味がなくなる(上の例なら黙ってraise 'foobar'を実行すれば良いことになる)からだ。

本日のツッコミ(全5件) [ツッコミを入れる]

Before...

_ arton [と、パッチを作ったわけだが、そもそもわざとException派生かどうかよりもto_strを優先しているかを知りたか..]

_ naruse [異常なことをする人のためにわざわざ処理を追加する必要はあんまり感じないかなぁ。 というスタンスの人がおそらく多いの..]

_ arton [まあ、そうですね(というか、そこに同意できなければredmineに書いてるわけだし)。]


2018-12-30

_ ロメールの友達の恋人

妻が図書館で、ロメールがあったといって友達の恋人(正確には女友達の男友達)を借りてきたので、30年ぶりに一緒に観る。というか1987年の作品なのでまさに30年ぶりだ。おそらく、今は無き渋谷のシネセゾンか、六本木のシネ(忘れた)で観たはず。

ロメールの寓話と格言シリーズの最後の作品らしくて、人物紹介が最初行われる。市役所の大きな個室を与えられている若い女性官僚のブランシュ、電力会社の官僚のアレクサンドル、学生のレア、美術学校の学生らしきアドリアンヌ、台詞が少なくていまいちよくわからないがおそらく研究室らしき場所にいるので研究者のファビアンがぱぱぱぱと切り取られて、格言の私の友達の友達は私の友達、というのが示されて始まる。

物語はどうでも良くて基本は会話と表情と風景の切り取り。リズムが良く会話がおもしろいので、目の離しようがない。見事な映画だ。

1人で飯を食っているブランシュ(白雪姫なんだろう)のところに、レアがやってきて一緒に飯を食っても良いか? と尋ねる。1人で食っていると男が声をかけてくるからいやなんだ(悪気はない)。ということから、ブランシュはぱっとしない外見で、レアは人目を惹く外見なのを強調する。

会話をしているうちに、ブランシュはデフォンス(労働者の集合団地がある場所だから多摩ニュータウンみたいな感じ)の近くのもう少し高級な場所(多摩センターの後ろのほうぐらいの感じか)に住んでいることがわかる。というか、それなりに高級官僚だ。レアが学生だが卒業すれば同様な役職に就くのは明らか。

二人はそれなりに仲良くなり、ブランシュはレアに泳ぎを教えることになる。

二人が歩いているとファビアン(誠実ではある)が向こうから来る。レアと同棲しているのだが、すれ違いも多いらしい。目つきが良くない。一方的に喋ってレアと一緒に行こうとするのでブランシュは帰る。

一方、プールでレアとファビアンの共通の友人のアレクサンドル(王様だな)を見かける。イケメンで背が高い。背が低くてぱっとしないブランシュは一目惚れする。

その時のアレクサンドルはアドリアンヌとつきあっているが、基本、常にもてるので寄って来た女性とつきあう状態だということがわかる。

レアに励まされてブランシュはアタックをかけようとするのだが、何しろ自己肯定感が低すぎるので、何もできずに悔し涙に暮れることになる。

一方、レアは何かと細かいファビアンにうんざりして別の男友達と旅行に出る。ブランシュはファビアンと同じ日に2回も出会ったためにウィンドサーフィン(湖に近い)をすることになり、さらに労働者階級用のキャンプ場をうろつき、山の中に入る。レアは労働者階級の遊び場は嫌がるけど、おれは好きなんだ。私も結構楽しい。ということで、ついねんごろになってしまうのだが、ブランシュの自己肯定感の低さがときどき爆発するので、ファビアンは困惑するいっぽうでそれはそれでOKな感じでもある。樹が風に吹かれる。

が、レアの旅行はうまくいかず、ファビアンとよりを戻す。ブランシュはそれはそうよね、と自己肯定感の低さを爆発させて素直に納得する。

とは言ってもブランシュはアレキサンドルと出会ってもやはりうまく口を利くことができない。ウィンドサーフィンはする? いや、僕は海でヨットに乗る(キャンプ場だけでなく、どうもウィンドサーフィンも労働者階級の娯楽なのかも)。

ブランシュ(気張ってやたらとえりが強調された青い服を着ている)とレアが一緒にいるところにアレキサンドルがやってくる。レアはブランシュのためにいろいろとアレクサンドルとの会話のきっかけを作ろうとするのだが、そのうちに普通にアレキサンドルと自分の間で会話のピンポンが始まってしまう。それを無駄に見ているうちにブランシュはうんざりしている自分に気付く。悲しくなってその場を離れる。1人でうじうじしていると、アドリアンヌがブランシュに気付く。あら素敵な服ねと近寄って来て、アレキサンドルの官僚くささが嫌になったから、やっぱり芸術家のコミュニティに戻るというようなことをブランシュに話す。

ブランシュが何がなんだか混乱しながら帰宅するとファビアンからレアとは完全に別れることになったからおれと付き合ってくれと言われる。アレクサンドルよりもファビアンに惹かれている自分に気付いたブランシュは了解し、人気があまりない湖畔の食堂で待ち合わせの約束をする。

でも映画はここでは終わらない。

それを知らない青い服のアレクサンドルと緑の服のレア(すでに一緒になることを決めている)が人気があまりないので湖畔の食堂で飯を食おうとやってくる。

先に青い服を着たブランシュが1人でいるのを見つけたレアが、(まだブランシュはアレキサンドルが好きだと思っているので)アレキサンドルに隠れていてくれと頼んでからブランシュの横に席を取る。

実はあなたに言わなければならないことがあるの、とレア。

何かしら。

実はあの後いろいろあって、やっぱりつきあうことにしたの。

ファビアンとよりを戻すことだと勘違いして怒り泣き出すブランシュ。

困るレア。

向こうから何も知らないファビアンが緑の服を着てやってきて、店の中からは隠れているが表では丸見えのアレキサンドルに挨拶する。(ファビアンとアレキサンドルは妻によれば肉体関係があるくらいに親しい仲だし、まあそう見える。もちろんホモではなくてそれはそれこれはこれ)

二人で連れ立って中に入り、誤解もとけて4人仲良くおしまい。

ブランシュの自己肯定感の低さがあまりに筋金入りなのでファビアンの前途は多難そうだが、まあめでたしなのだろう。

友だちの恋人/風景の変貌 (エリック・ロメール コレクション) [DVD](エリック・ロメール/マルガレート・メネゴズ)

やっぱり抜群におもしろい。ロメールは最高だな。


2018-12-31

_ ロメールの風景の変容

友達の恋人のDVDにおまけとして20分のテレビ番組が入っていたので妻と見る。

すさまじくおもしろい。

都市には美があり、田園風景にも美がある。コロー、ミレー。

でも19世紀半ばから純粋な田園風景に工業施設が入り込んだ。

これは醜いか? いや、これも美なのだ。

工場の前の畑でミレー描く農民のように種をまく農夫。道。電線。ぼた山。工場。行きかう自動車。

都市はどうか?

メトロからの風景を見てみよう(この時点まで、おれはメトロはサブウェイのフランス語だと思っていたが、全然、認識が間違っていて、あくまでもメトロポリスにおける交通、つまり都市交通という意味と知らされることになる)。高架の上から見る風景。徴税吏の建物。鉄路のカーブ。煙突。すべてが溶け込み美しい。

すぐれた画家は気づいている。

畑の中の製粉工場を描いたゴッホ、直線の構成のモンドリアン、ドローネなどなどが映し出される。

煙突。煙。電線。塔。アンテナ。

1950年代後半から1960年代前半あたりの産業風景宣言っぽい。すさまじくおもしろかったし、すごく理解できる。


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