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日々の破片

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2018-12-18

_ 新国立劇場のファルスタッフ

2015年の12月から3年ぶりなのだが前回の記憶がほとんどなくて、舞台の回りっぷりにえらく興がそそられる。

最初支配人(かどうかは知らない)が出てきて、クイックリー夫人(だと思うんだけど)が風邪をひいたが、本人は大丈夫といっているから歌いますという何かあっても勘弁というエクスキューズみたいなのを話す。

ファルスタッフは、オテロでほとんど序曲らしきものを排した続きで、幕があくといきなり歌い出すわけだが(序曲を前奏曲に変更したヴァグナーに対抗して、なくしてしまうという選択はおもしろいと思う)逆に印象が薄い原因なのかなとか考える。

しかしそれはそれとして、ロベルトデカンディアのファルスタッフの偉丈夫っぷりにえらく感心する。

アリーチェのエヴァ・メイは実に良いし、ナンネッタの幸田浩子も実に良い。歌手はとても良いのだ。

が、1~2幕連続の約90分はいささか長いと思う。

3幕は抜群なのだが、冒頭のファルスタッフの述懐がいまひとつ、以前観たときの印象と違い過ぎる。もっとかっこ良い曲だったような気がするのだが、ほとんどシュピレッヒシュティンメみたいに聴こえる(多分、1幕終わりあたりの曲とごっちゃにしているのかも知れない)。とは言え、良い曲ではある。

なぜか理由は良くわからないのだが、登場人物の中で一番好感が持てるのがファルスタッフなので、全員がある意味敵にまわっていじめる物語の構造が、いまひとつ楽しめない理由かも知れない。とはいえ、最後はファルスタッフ自身が笑って終わらせるわけで、そう嫌いなわけでもない。妙な印象な曲だな。

突然、薔薇の騎士は、単にフィガロの結婚というだけではなく、オックスの奇抜さ、愚連隊を率いる太り気味のおっさんであり、誇り高き騎士(貴族)であり、しかし現実には金が欲しい詐欺師的な位置にあり、周囲から魂胆を見抜かれていて結婚詐欺まがいのことをされて、お化けの集団に脅かされる、しかし騙されたとわかると気分よくあきらめるというプロットから、ファルスタッフでもあるのだな、と思った。


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