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日々の破片

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2010-05-19

_ 200万人の実験

ルワンダ中央銀行総裁日記を読了したが、さていろいろな考えが浮かぶ。

単純化すれば、為替を実体に合わせて一本化することで市場が自由経済によって駆動するようにし(為替差益で暴利を貪る外国人(白人系とインドを含むアジア人系で利権差があるため、白人系ということになる)の利益を縮小させ、商業の自由化を進めて市場に出回る必需品(屋根に使うトタン板なんていうものも含まれる)の価格を押し下げ)、それにより国民の購買意欲を高めることで輸出品(コーヒー)に対する生産意欲を押し上げて外貨を増やしていくことで財政基盤の安定を図って、それが6年間の間に凶作にやられた1年を除けばおおむね成功した、良かったね、ということだった。村のほうへ行くと、年をおって、人々の服装がきれいになり、家が立派(といってもトタン板で屋根が葺けるようになるというレベルの話である)になっていくのが実感できるというのだから、マイナスから出発すればゼロになるだけでも大成功という話ではあるよなと覚めた目で読みながらも感動的だ。

ルワンダ中央銀行総裁日記 (中公新書)(服部 正也)

しかもその中には山のような知見やら志やら交渉ごとやらが盛り込まれていて、実録版男子の本懐とでもいうような内容となっている。

?先進国から派遣されてきているといっても、国が国なのでどうしようもないのがたくさん

?アメリカとかドイツは植民地支配のうまみをそれほど味わってきていないので比較的合理的に判断する

?カイバンダと次の大統領のいずれも長期政権の末期には奥さんの親戚による政治専横による腐敗があった→最初、劉邦のときの呂氏による権力支配を類推したけれど、この国の場合はフツ(多数派)有力者に対してツチ族が子女を夫人として提供するという慣習があり……ということやら80年代以降の歴史やらに思いが至ったときに非常な不快感を覚えたのは事実。

?1960年代に40代だった著者が、おれの国ではどんなに貧乏人の子供でもまじめに勉強すれば良い学校に進め、良い職につけるのだ。その人材の自由競争がどれほど国家にとって良いことであるのか云々と独回(別の単語なのだが、読み間違えて覚えていたらしいのでまったく出てこないしわからない)するところがあるのだが、さて機会不平等後の現在ではどうだろうか? とか。(もっとも分母がばかでかければ、ある程度のカテゴライズがされていても十分に自由競争が保証されているという見方もできるような気はするのだが)

機会不平等 (文春文庫)(斎藤 貴男)

?インセンティブという言葉はこの頃は日本語化されていなかったのだな。(外国人顧問がルワンダ人はなまけもののバカばかりだ、というのを聞いて実態を調べに行くと、ルワンダ農民たちは、市場に商品が出回っていない=買いたいものが手に入らない=現金収入に価値がない=コーヒー作ってもしょうがない というまさに経済感覚の固まりであることを「発見」して、ばかはこの事実に気づかない外国人顧問じゃないか、これなら正攻法で市場を回せるぞと悟るところとか、今なら、インセンティブという言葉がうれしそうに出てくるところだ)

?成功させるための演出として情報をリークしてインド商人に商品を山ほど仕入れさせるくだり。それが国際通貨基金の手抜きで手続きが遅れて支払いが先か為替一本化が先か(消費財にとってはルワンダフラン高になる)と時間勝負になって、ここはちょっとしたサスペンスだ。

?というか織田信長の楽市楽座から成長戦略の基本は変わっていないような

?密輸商の存在から、実質為替レートやら市場が求める商品(これを調べないと関税をどうするか決定できない)を調査して、かつ一定の流通規制を緩和することで密輸商を正規な商業ルートとは別に残るように法律を変えるとか

?大虐殺→隣国の謎(元の国とどう関係しているのか良くわからない)集団による侵攻→支配 って、カンプチアをどうしても想像してしまうのだが、さてあまりあほうがのさばっていると次の関東大震災とかで同じようなことにならないといいなぁとか不安になったり(するけど、そういうあほうは実はコピペ虚兵の法で数が多いように見せかけているだけだろうから大丈夫だろう)。

いや、実におもしろい。おもしろかった。これ、ミクロ経済とマクロ経済の両方についての生きた(ある意味、生きたからこそ殺すだけの価値が作られたとも言えるところが戦争はよろしくないということでもあるけど)実例なわけだし、それ以外にも政治(ベルギーの市中銀行の関連企業寄り合い会での演説とか)あり哲学(比較的素直な自由経済万歳哲学)あり、なんとなくおれの職業柄うれしくなるようなところ(ベルギーの鉱山会社にいろいろ世話になるので無理なお願いをしにいったりするところで、これらの会社の持ち主はもともとは鉱山技術者だから云々というあたりとか)があったり、単純に、半世紀前に国家の危機を救うため請われて海を越えた日本男子ここにあり的な物語として読んでも良し(きむら(k)さんとか好きそうだ)、いやぁ、実に読んで良かった。

なんで、こんなにおもしろい本が80年代以降忘れられていたのか(不幸なことに大虐殺のおかげで映画が作られ、それのおかげで本屋の平積みに戻ってきたわけで。ただ中央公論社のことだから絶版にさせたことはなさそうだし、その筋の人たちには読み継がれていたように思える)、世の中には他にもおもしろいものがたくさんあるということだけど、不思議な気はした。

ああ、あとおれがえらく感心したのは、わりと最初のほうで、中央銀行に赴任してみてみると、行員は仕事をしないし、外国人顧問は能無し、役員は経済を知らないし知る気もない、そもそも帳簿が存在しない、なんじゃこりゃ、と暗澹たる気持ちで安宿未満のとりあえず公邸で一人空しくなっているときに、ふと、でもこれだけひどいんだから何をやろうがやればすべてプラスになるんだからこれは楽だぞ、と気づいて安心するところだ。このポジティブシンキングは素晴らしいし、そういう発想をここぞというときにできるってのはかっこいいな、と思った。

_ 中黒はてな君

なんで中黒が化けらった?


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