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日々の破片

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2021-04-11

_ 新国立劇場の夜鳴きうぐいすとイオランタ

イオランタは、ネトレプコのやつをメトライブビューイングで観たので知っているが、ストラヴィンスキーの夜鳴きうぐいす(というかナイチンゲール表記を最近は行わないのか?)は初めてなので楽しみ。

ふと気づいて子供に、家にあるアンデルセン全集のやつは読んだのか? と聞くと、読んでないが、以前、チェコかロシアのアニメを一緒に観に行ったから知っていると言われて、ああそういえばと思い出した。

イジー・トルンカだ。

イジィ・トルンカ作品集 VOL.4 [DVD](イジィ・トルンカ)

あれは実に良いものだった。

で、公演前にぱらぱらとプログラムを眺めて、第1期の作品と知るわけだが、鳴り始めると想像していた第1期の音楽とはあまりに異なって驚くよりも退屈しまくった。第1期といっても放蕩息子の帰還の頃の感じだろうか? 比較的重層的なオーケストレーションに、大して整合性が(即時的に聴き取っている限りは)取れない曲の構成だ(リズムによる構造はあるようなのだが、春の祭典と異なり全体的に緩慢なテンポなのでこれも見えない)。

(むしろ、プログラムで誰かが書いている、期で分けるのではなく、作風で分けて考えるほうがストラヴィンスキーというカメレオン(時間経過によって脱皮したり羽化したりするように変化するのではなく、その場の状況に応じて変化する)に対しては正しい解釈ができるのではないか? というのがしっくり来る)

ナイチンゲールの三宅理恵という人は実に頑張っているのだが、いかんせん、曲の構造が取れない無調音楽なので退屈しかない。

曲の構造が取れない無調音楽は、よほど音色の構造や、ここぞというメロディや、あるいは明瞭なモチーフの繰り返しが絶対的に必要だと思うのだが、何しろそれがまったく見えない。がっかりだ。

(ところが家に帰ってから、先日届いたストラヴィンスキーエディションのジョン・ネルソンが指揮してデュセが歌っているやつだと、明瞭なメロディがあって遥かに聞きやすい(特に猟師の歌の周りが違う)。同じ曲とは思えないが、どの音を強調するかの解釈の差かな? というか、予習に聞いておけば良かったのだが時間が取れなかったのだった)

Iror Stravinsky Edition(Various Artists)

そういえば、なぜロシニョールなのにナイチンゲールなんだろう? と子供に尋ねる。ロシニョールって雄鶏だよな。フランスの雄鶏がロシアではナイチンゲールなのだろうか?_

すると、予想外に、ロシニョールはナイチンゲールでしょ。と答えが返ってきて混乱する。

だって、ロシニョールっていうスキー用品屋のロゴは雄鶏だよ。ロシニョールっていう会社のロゴに違う鳥を選ぶってないんじゃないか?

すると子供はiPhoneでロシニョールを検索して、この鳥はナイチンゲールなんじゃないか? と言い出す。

そりゃあり得ないだろ。どう見ても雄鶏じゃん。

うーん、確かに……というわけで、調べた結果、ロシニョールは名前と無関係にフランス国家の許可を得て、フランスの国鳥である雄鶏をロゴにした(要はフランスの会社ですぞと名乗っている)ということがわかった。なるほど、言われてみればロゴの鳥は自由平等博愛色に染められているな。

それにしても紛らわしい。が、思わぬところで知識が更新された。

で、イオランタだ。

メトの解釈だとルネは最後に孤独の闇へ閉じ込められるが、こちらは妻屋(がルネなのだが、実に立派なものだ)は、圧倒的に自由な精神の持ち主の父親として、臨機応変に子供が最も良い結果を得られるように選択しまくっている演出で、普通にハッピーエンドで良かったね。

なぜかムーア人の医者が白人だとかはあるにしても(それはそれとして説得力がある良い歌手だ)、イオランタの大隈という人も美しく、ヴォデモンは鼻声系とは言え曲には合わないわけでもなく、何しろチャイコフスキーの曲が美しい。時期的には眠りの森の美女の頃なのかなぁ。交響曲5番っぽいモティーフ含めて実に良いものなのでこちらは退屈とは無縁だ。

それにしても、あらためて、イオランタの目が見える/見えない論争の先見性には舌を巻く。神という概念を平等性のために持ち出すというのは人類の智慧の1つなのかも知れない(が、逆に神という概念が差別ももたらすので、要はその人の考えなわけなのだが)。

Tchaikovsky: Iolanta(Pyotr Ilyich Tchaikovsky)

(ネトレプコ、もうだめかと思っていたら、驚くほどイオランタは素晴らしい)


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