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日々の破片

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2022-02-06

_ 新国立劇場のさまよえるオランダ人

期せずしてのオール(指揮者除く)日本人キャストとなったさまよえるオランダ人だが、びっくり仰天、日本すげぇと心底思った。

ゼンタの田崎は最初からの予定だったようだから当然なのだろうけど、声量、声、立ち居振る舞い、本物のゼンタだ。

オランダ人の河野も、2幕のゼンタの後方に立っての二重唱でこそ歌い負けしているように感じたが、これまた声量、声、立ち居振る舞いどれをとっても抜群で、結局さまよえるオランダ人として前回観たときよりも遥かに良かった。

(まあ最近の妻屋が良いのは今や当然なのだが、コミカルな役もうまいな。それにしても最初にファーゾルドだかファフナーだかで観たときはなんか背丈はともかくぱっとしないと思ったのだが、ナブッコあたりからえらく存在感が出てきたように感じる)

で、まったく期待していなかったエリック(どうせ日本人テノールの鼻にかかったような気持ち悪い歌だろうと思っていたわけだ)なのだが、城ってとても良いではないか。声は美しく良く通る。なんか一本調子かなぁと思わなくもないが、とにかくきれいな声で感動的ですらある。

それにしてもさまよえるオランダ人は奇妙な物語だ。

シンドバッドのように稼げる商人=船長である親父が、見張りが居眠りしている間に突如現れた船の船長の贈り物に目がくらみ娘との結婚の約束をする。バスバス(バリトン)の二重唱が美しい。(が、一幕はちょっと退屈でもあるのだが)

2幕が始まると、商人の家なのかなんなのかよくわからない場所で娘たちが糸を紡いでいるところに、さぼって絵に描かれた「さまよえるオランダ人」の絵姿に胸をときまかせている二次元オタクのゼンタが現実の恋人のエリック(なぜか商業の港町の猟師。というかなぜ猟師なんだろう? 魔弾の射手へのオマージュなのかなぁ)よりも、絵に描かれた伝説のオランダ人こそ自分の憧れとばかりにバラードを歌いまくる。

そこにエリック登場。お前、現実の恋人のおれをしかとするんじゃねぇ。ていうか嫌な夢を見た。お前の親父が悪魔を連れてくるんだが、お前はその悪魔と一緒に旅立っちまうんだ。

「わーうれしい」

「くそ」

というやり取りをしているうちに親父登場。上手にオランダ人が立つと、ゼンタ、絵姿そっくりのオランダ人にぴぴっと来てしまう。親父グッドジョブ。

親父は欲に目がくらんで勝手に結婚の約束をしてしまったものでいろいろご機嫌うかがいしまくるが、二人にしておきますですと立ち去る。

すぐさまお互い理解しあう二人。やったね。

3幕、親父の船の船乗りが上陸祝いをしていると恋人とか妻とかがやってきて賑やかなシーンとなる。見張りが、オランダ人の船乗りにも酒を振舞おうぜと言い出し、みんな賛成する。が、オランダ人の船は静まり返っていて灯りもついていない。どうも怪しい。と、不吉な歌声が聞こえてくる。

新国立劇場の合唱団は本当に素晴らしい。間違いなく、最高のオランダ人(の1つ)だろう。

うん、どうもこの船は伝説のオランダ人の幽霊船だな、と一同気づく。

一方、エリックは正夢だと気づいてゼンタを詰問する。美しい歌。歌手が抜群で説得力がありまくる。

それを見ていてオランダ人、気づく。

自分を救済するには、死ぬまで誠をつらぬく乙女が必要だが、契りを結べば乙女ではなくなり地獄へ落とされる。だからこれまで自分が救済されることはなかったのか(オランダ人は十分以上にもてるのだ)。呪いは堅結びだ。これ以上、乙女を犠牲にすることはできない。

オランダ人、ゼンタを振り切って船に乗ろうとする。

が、実はゼンタはそんなことは百も承知だ(何しろ、ずーっと絵姿を眺めながらシミュレーションをしていたからだ)。

大丈夫、私に任せなさいとオランダ人とエリックを振り切って船に乗り込む。

そこに町中の人たちがやってくる。

困ったオランダ人、説明のために名乗りの歌を歌う。「私がさまよえるオランダ人だ!」

が、親父以外は全員知っているので何も起きない。

(なんでこんな妙な脚本にしたのかなぁと子供に話したら、ワーグナーは名乗りの歌が好きなんじゃない? と言い出す。ローエングリンでやっと脚本的にも成功するわけだな。でもジークフリートではさすらい人はジークフリートに名乗る前に去られてしまうわけだが(その代わりワルキューレではジークムントは2回も名乗る))

一方ゼンタは誠を貫く乙女は私よと叫びながら幽霊船もろとも海に沈んでいく。

無事オランダ人の呪いが解ける。浦島太郎の玉手箱どころではない年月がたっているのでオランダ人はそのままミイラ化して昇天する。


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