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日々の破片

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2022-04-20

_ スパークス・ブラザーズ

シャンテでスパークス・ブラザーズ。

影響を受けたり関係したり(元バンドメンバーとか)人とメイル兄弟に対するインタビューと、当時のフィルム(スパークスが映画好きということで本人たちとは関係ないフィルムも混ぜている)、それぞれのアルバムから主要曲のさわりで構成されている。

エドガーライト本人が大ファンのインタビューイとして出てくる。

最後のスパークスに対するインタビューは、おそらく「これから20個のでたらめを休まずに言ってください」という感じかな? 最後、ラッセルが実は作詞作曲はおれがやっていると言い、ロンがスパークスとはおれのことで、やつは単なる歌手(ちょっとチャーリーワッツのエピソードを思い出す)と言う。

どこから出たのかわからないが、おれは完全にイギリス人の兄弟が印税逃れのためにアメリカへ渡ったのだと信じ込んでいたのだが見てびっくり、完全に間違っていてLA生まれ(ロンに良く似た風貌の父親は雑誌のイラストレーター)だった。まずは監獄ロックで音楽と映画に目覚める。でもロン11歳、ラッセル8歳のときに父親は死去。残った母親が頑張り、ビートルズのLA公演にはおんぼろ車で兄弟を送る。

高校時代は(少なくともラッセルは)フットボール選手だったが大学で兄貴とバンドを組む。

トッドラングレンがハーフネルソンに目をつけるがまったく売れない。

次に契約したレコード会社が、ロンがチャップリンみたいだということで、コメディアンのイメージだから、マルクス・ブラザーズのもじりでスパークス・ブラザーズとしようとバンド名の変更を提案。さすがにそれはちょっとということでスパークスとなった。

が、売れなくて契約を切られる。

マネージャだかが(アイランドかな?)と交渉してくると、君らはUK向きということで、バンドメンバーを英国人としてイギリスに舞台を移すことを提案される。キンクスもフーも好きだ。というわけでバンドメンバーをあっさり馘にして二人はイギリスへ飛ぶ(このあとも、ばさばさバンドメンバーを切り捨てることになる)。

キモノマイハウスの1曲目のThis Townがテレビで流れるとUKミュージックシーンにセンセーションを巻き起こす。

確かに、何度聞いてもなんだこれ? と発見がある名曲だし、しかもテレビにはヒトラーと(どう形容されたか忘れたが)セクシー兄ちゃんが出ていて奇天烈このうえない。

どうでも良いが年を取ったロンは背を高くした裕仁みたいで、さすがにムッソリーニ役はいないが一人枢軸国だ(というか、三木徳平みたいでここでもコメディアン)。

だが同じことばかりでは嫌になる。というわけで新機軸を打ち出すがまったく売れなくなる。LAに帰るが終わった人扱いになる。

というときに、インタビューを受けて次のアルバムはジョルジオモロダーと組むと適当を言ったら、そのインタビュアーがジョルジオモロダーの知り合いだった縁で実現する。ジョルジオモロダーはスパークスの機材を見て目を丸くする(おれはてっきりミュンヘンで作ったのだとばかり思っていたが、LAの(おそらく)スパークスの自宅スタジオで作られたのだな)。

というわけでNo.1 ソングインヘヴンが出る。

おれは、ほぼリアルタイムで聞いた(日本盤は出なかったんじゃないかな。で、今は亡き青山のパイドパイパーハウスで買ったはず)ので、実に思い入れがあるわけだが、今でも好きだ。

かくして、1979年にUKミュージックシーン(アメリカのエピゴーネンっているのだろうか? SuicideとかChromeとかはそれにあたるのだろうか?)に衝撃を与えまくる。

インタビューイとしてヤズー(デペッシュモードにもいたのかな)のやつが出てきてどれだけ興奮したかを語る。そうか。全然気づかなかったが、デュオ(ヤズーもそうだが、ユーリズミクス、ネイキッドアイズ、オーケストラルマヌーバーズID、ソフトセルとかいっぱい)の大先生なのか。ニューオーダーの誰か(見覚えない名前のような)が、ジョイディビジョンも影響を受けたとか言っていてまじすかと思う。全然関係なさそうなのに。

このころ、ジャックタチの映画に参加する話があるがタチが病気になって立ち消えるが、映画が好きなのでからみたいスパークスはジェットコースターのパニック映画に楽曲と出演をしている(らしい)。

映画内で暴走ジェットコースターが最後脱線して売店の屋根に突っ込むどう見てもジョークとしか思えないシーンが入るけど、本気で作られた商業映画なんだろうか?

・見ていて思い出したがヘヴンで山崎晴美か高杉弾かどちらかだと思うが、スパークスのロンが暴走するジェットコースターをバックに無表情でピアノを弾くプロモビデオがどうしたとか書いていたのを読んだ記憶がある。

・ポップ音楽シーンではUKはUSの常に先を進んでいると思うのだが、実際はストージーズとかニューヨークドールズとかラモーンズがUKに影響を与えたパンク(というのは知っている)と同じ構造でエレクトリックポップもスパークスが与えた影響が多大だったらしい。USのはみ出し者たちがUKに影響を与えて、それがUSに戻ってくる(理由は人口4億対人口4000万なので実験場になりやすい)ということみたいだ。

が、快進撃とはいかない。

(このあたりまでは調子が良かったらしい。どうでもよいが40年たったジェインウィードリンがインタビューイで出てくるが年をとってますますチャーミングな人だ)

苦難の年が始まるが、麻薬もやらず極端な遊びもしないので、貯金で食いつなぎながら楽曲を作りまくる。この間、サイキック舞の映画のための音楽を作るのだが監督予定のティムバートンが降りてしまって立ち消えになる。

が、余分なサックス無意味なヴァイオリン(日本版はあるのかな?)というみょうちきりんなタイトルのアルバムで復活(おれはその前のインテリアデザインは好きで買って持っているのだが売れなかったのだな)。

Gratuitous Sax & Senseless Violins [Analog](Sparks)

久々に売れたらしいおれがマイウェイを(シナトラやシドヴィシャスですら歌っていたのに)歌えるのはいつ? は映画内では割と大きくフィーチャしている。

が、それも長くは続かない。

(キモノマイハウスも次のプロパガンダもジャケットワークを映画内では褒めちぎっている人たちが出てくるが、実際のところ、おれはジャケットワークがどれもこれも好きになれないのでスパークスのアルバムはあまり買う気にはならない。No1のハイセンスは好きだしインテリアデザインの50年代風がばかげていておもしろいので買ったけど。あとベスト盤はジャケットワークが気に食わなくても買って持っていた)

が、リルベートーヴェンで復活。続くハローヤングラヴァーズも売れる。この時期の来日公演をおれは観ている。確か、六本木のブックマート青山でインタビューがあって(スパークスブラザーズの監訳もしている岸野雄一が呼び屋兼インタビュアーだったような記憶がある)、ロンがラッセルを「スポンジみたいな(なんでも吸収する)野郎」と評していたのだけ妙に印象に残っている。

で、カンヌでレオスキャラクスと知り合って意気投合、やっと念願の映画製作が実現する。

そういうことだったのか

というか、この映画で初めてレオスキャラクスを見て、アネット冒頭のタバコをすばすばしながら(フランス人だから普通にタバコを吸いまくるし映画に入れる)ミキシングルームにいるのが作家本人と知った。さらに、原案自体がスパークスということも知る。

すると、作中の常に異常な結果となるヘンリー⇒アンの関係、ヘンリー⇒伴奏者の関係は、

コメディアン⇒歌い手

遊び人⇒作曲者

という鏡像関係にある見た目のスパークスイメージと重なるみたいだ。だが、映画と違って現実では異常な結果は対消滅するので、二人並んで仲良く仕事(作曲とかアレンジとかだろうけど)している映像に収斂できてめでたしめでたし。

おもしろかった。

最後、別アレンジのNo.1ソングが流れるのだが、初めて認識したが、これはおらは死んじまっただの一歩手前の歌なのかな? なぜなら天国の歌が聞こえてきているわけだし、と歌っている。

No. 1 In Heaven [40th Anniversary Edition](スパークス)

(おれは立ち止まってしまう聴き手なのでやっぱりこれが好きだな)

Mael Intuition: Best Of Sparks 1974-76(スパークス)

(この初期ベスト盤がすばらしいのは、1曲目をキモノマイハウスと同じくthis townを置いたことだと思う)


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