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日々の破片

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2025-07-28

_ ラインの黄金

ラインの黄金を観にバイエルン国立劇場。

指揮のユロウスキーという人は全然知らないが現在の監督らしい。精妙できれいな音を作る。

演出が抜群に良い。きわめて正攻法な物語通りの演出なのだが衣装や舞台設定が巧妙に現代化されている。

いかにも麻薬の取引に使われそうな裏通り、チンピラ風のアルベリヒがうろうろしているところにラインの乙女登場。なんだかよくわからないが、気功を使って物を吹き飛ばして遊んでいる。アルベリヒも吹き飛ばされる。

黄金はヘロインかなぁ。地面の下に隠してある。

一方、天上ではパイプ組の工事現場の3階でヴォータンが寝ている。まあ、誰一人としてまっとな生活者には見えない。

ファフナーファーゾルト登場。なぜかまともな黒い服を着ている。施行主に土下座。この馬鹿丁寧な土下座演出は何度も繰り返されるので、そのうち場内に笑いをもたらす(というか、おれも笑わせられた)。

上下黒のスェットに身を包んだローゲ登場。このローゲは抜群。パニカーという人。落ち着きなく目配りよく、やたらとタバコをふかしまくる。金のリンゴをタッパーに入れて持っているので、少しヴォータンに与えて生気を取り戻させる。

フリッカが黄金の指輪の話に目を光らせて割り込んでくるところは会場が笑いに包まれる。ドイツ語ネイティブではない(字幕読解の落差がある)おれも思わず笑ったわけで、演出の妙味が光り輝いている。とにかくこの演出は演劇的にも抜群(役者=歌手もうまいわけだ)なのだ。

ローゲとヴォータンのニーベルンゲン紀行は途中からビデオ映像になる。むちゃくちゃおもしろい。ヴォータンは槍や兜をとられて背広に着替えて、二人で飛行機に乗る。ニーベルングはニューヨークなのかなぁ。

帰りの飛行機で行きにはリンゴが入っていたタッパーにカエルが入っている。隣の乗客(3人掛けなので、ヴォータンとローゲはエコノミーに乗っているわけだ)にカエルを見せる嫌がらせをしまくる。入国管理というか税関でカエルが没収されそうになって言い合いになる。くだらないがおもしろい。

教会の会堂のような場所でアルベリヒは全裸にむかれて(カエルだったのだからそりゃそうだな)、徹底的に貶められ、汚され、拷問される。

フレイアが隠れる高さではく、フレイアはギャングの抗争っぽく首を吊られて、足元に台として(首を吊られなくても済む)黄金を積み上げる仕組みとなっている(が、黄金ではなくよくわからない包みになっているからやっぱり麻薬なんだろうな)。当然、そういう仕組みだから頭巾や指輪は量の問題ではなく内容の問題として要求されるように読解される。

エルダ登場。レームクールと読むのかな? すごい人で、圧倒的な説得力ある歌唱で、ヴォータンが指輪を手放したり後から襲いに行ったりするのもむべなるかな。この人は凄い。

ヴァルハラは聖壇(アルベリヒを拷問した会堂)で、中央にヴォータンが鎮座する。

ローゲは愛想を尽かして去る。

とにかく演出の妙味が冴えわたっている。歌手ではヴォータンのブラウンリー(と読むのかな)も素晴らしいが、とにかくローゲとエルダが素晴らしかった。ローゲに僕が求めるのはこういう軽さと身のこなしで、以前ビデオで観たエレールと双璧のローゲだった。

楽しかったなぁ。

ハープ4本は2(1?)階バルコニーの左右に分散。

カーテンコールで子供が出てきたが、いったいどこにいたのだろう? ビデオの中に出てきたような気がするのだが、思い出せない。。

とにもかくにも演出(と、それをこなした舞台作家、映像作家、衣装作家、歌手=役者)の大勝利で、演出家はクラッァーという人なのかな? (クレジットを見てもよくわからん)。これまで観た中で最高のラインの黄金だった。


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